フーバーダムの監査廊見学

4月下旬にラスベガス出張したついでに、フーバーダムの監査廊見学をしてきたので紹介します。

フーバーダムの概要


1931年着工、1936年完成。大恐慌の最中に建設された、重力式アーチダムです(写真はツアー前に展望台から撮影したもの)。堤高は221mとそれほどではありませんが(ちなみに日本でもっとも高い黒四ダムは186m)、貯水量が約400億立方メートル(日本のすべてのダムの貯水量合計のだいたい倍)と、とんでもない量です。

ダム便覧に掲載されている紹介記事はこちら。http://damnet.or.jp/cgi-bin/binranB/TPage.cgi?id=19

ダムの目的は、発電、治水、利水と、多岐に渡るようです。これらは両立しにくいものもあると思うのですが、付属の展示館を見ている限りでは、3つの効果が均等にうたわれていました。

場所は、ラスベガスから30〜40分程度。私はレンタカーで行きましたが、アメリカでの運転に慣れていない人は、ラスベガスの市街地から複数の観光ツアーが出ているようなので、それに乗ってしまうという選択肢もあります。なお、観光ツアーで監査廊見学できるかどうかは未確認です。

見学ツアーについて

フーバーダムで行われているツアーには2種類あって、発電所のみを見学するPowerplant Tourと、発電所を見たあとに監査廊(ダムの中)まで見られるDam Tourがあります。いずれも、チケットの予約不可、当日現地窓口で申し込む方法しかありません。

Dam Tourの公式な説明はこちら。https://www.usbr.gov/lc/hooverdam/service/DamTour.html

Dam Tourは30ドルと結構な値段ですが、かなりの人気です。30分に1回、20人ずつしか受け入れていないのですが(ダムによく行く人ならすぐ分かると思いますが、エレベーターの定員です)、私は10:00ちょっと前に到着して、12:00開始のツアーになりました。

といっても、展望台と付属の展示館をマジメに見ていたら、その程度の待ち時間はあっという間に過ぎてしまいます。集合時間に遅れないように注意が必要です。

私が行ったときには、案内をしている係員の中に日本語が分かる方が1人いて(四国でJTBの仕事をしていたとか)、わざわざ声をかけてくれましたが、案内表示もツアー中の案内も、すべて英語です。特に、展望台と展示館以外の場所に行くと、セキュリティチェックを再度受けるため余計な時間がかかるという点には、注意が必要です。

見て来た感想

日本で行った監査廊見学は、どれも結構寒かった印象があるのですが、ここの監査廊はまったく寒くありませんでした。外の気温が、まだ4月なのに華氏100度(摂氏38度)に達していたという気候のせいでしょうか。念のためと思って持って行った上着が邪魔でした。

こちらの写真は監査廊内。

こちらは、途中で通る岩盤内に入り込んでいる通路。

約1時間のツアーですが、ガイドの方の説明が多く、見るよりも話を聞く方が中心という感じでした。その説明の内容も、展示館のパネルとかなり重複しています。見どころと言えるのは、2ケ所。発電所と、ダム下の覗き窓から外を見るところです。そんなにたくさんのダムを見たことがあるわけではありませんが、正直なところ、物足りないと思ってしまいました。ゲート室とか見られればなぁ…。

発電所設備風景。見学するのと反対の岸にも、同じ規模の設備があるそうです。

覗き窓越しに外を見たところ。覗き窓が1人分のスペースしかないので、すぐに次の人に場所を譲る必要があり、のんびり見ていられません。

桟の隙間から撮影するとこんな感じ。

エレベーターの外観はこんな感じ。

ツアー冒頭の映像や、現地での人気などを見ていると、フーバーダム建設は、アメリカにおいてプロジェクトXのような位置付けをされているように感じました。


日本の黒四ダムは、ダム本体の建設以前に、大町からの資材運搬用トンネルの掘削に工期のかなりの部分を割いていますが、このフーバーダムの場合、不定期に洪水を起こすコロラド川の流れを、ダムサイト上流から迂回させるためのトンネル掘削に工期の半分を費やしており、似たような話だなと思ったのは収穫です。右の写真が、迂回トンネル建設に関するパネルです。

ついでにどうぞ: 巨大アーチ橋

フーバーダムから見えるところに、巨大なアーチ橋が架かっています。さきほどの写真に写っているものです。

2010年までは、US 93という道路(国道ですね)が、フーバーダムの堤体上を通っていたのですが、片側1車線でカーブしているので、当然渋滞原因となります。そこでバイパスとして、フーバーダムのすぐ下流の渓谷に作られたのがこの橋です。正式名称は、Mike O'Callaghan–Pat Tillman Memorial Bridgeです。

この橋には、観光用の歩道(駐車場付き)があります。歩道の入り口はダムとは違うところなので、車で行くのですが、とても分かりにくくて、車で橋を通過してUターンする場所がないまま10kmほど走って何とか戻ってきて、適当に停めたState Parkのビジターセンターでパークレンジャーに聞くハメになりました。結果的には、10kmも走る必要はなく、車両セキュリティチェックよりも、内側(ダム側)にあります。橋よりもだいぶ低い位置にあり、階段を昇る必要があります。

橋の上はこんな感じです。かなりの強風が吹いてました。

橋からは、フーバーダム全体を見下ろすことができます。このアングルから見られるダムは多くないと思うので一見の価値ありです。ただ私は高いところが苦手なので、ダムの真正面まで橋を歩く気になれず、写真の角度が限界でした…。