創業の理念

会社設立のときは、色々な人に止められながらも、慎重派の自分らしくなく、何かに突き動かされるようにして起業しました。そのときは、その「何か」が自分でもよく分かっていなかったのですが、設立から半年たって、自分の中にあった強い思いが以下の2つにまとめられそうなことが明確になってきました。

  • ソフトウェアはもっとユーザの役に立てるはず → もっと「ツカえる」ソフトウェアを提供したい
  • ソフトウェア技術者の価値をもっと正当に評価したい

以下、それぞれの詳細を書いてみます。

もっと「ツカえる」ソフトウェアを提供したい

今まで特に公表してきませんでしたが、設立した会社の名前は「株式会社オンターゲット」です。「(お客さんのニーズに)ぴったりな」という意味の英語表現を探して、これに決めました。これがまさに自分がやりたいことです。

自分が雑誌に掲載されたBASICプログラムの打ち込みという形でソフトウェアに接するようになってから、25年以上が経ちました。その間、色々な形でソフトウェアを使い、また使われるのを見てきましたが、特にビジネスの現場で「ものすごい手間をかけて作ったのに、結局ツカえないソフトウェア」をちらほら見かけました。

企業で働いた経験がある人なら、「『新会計システム導入!』と言いつつ、旧システムが自動で出力していた一覧表が出力されなくなったので、毎週各部署で事務担当が画面を見ながらExcelに数字を転記している」といった光景に、誰でも思い当たるのではと思います。そして、そのたびに「ソフトウェア開発はカネばかりかかって、結局役に立たない」と言われてしまいます。

これは、ソフトウェアの力を実感していて、ソフトウェアが好きな自分には、とても歯がゆく感じます。「悪いのはソフトウェアではなく、ソフトウェアの活用法(または作り方)ですよ」と言いたくなります。

自分が会社勤めをしている中でも、「なんでこんな面倒な作業を毎日やっているんだろう」と思ったものがいくつかありました。正式に開発担当部署に依頼すると「そういう開発要件は、他の案件と優先度を調整して云々」と言われてしまいなかなかできないので、自分でExcelやApex(Salesforce上の開発言語)、果てはGreasemonkey(ブラウザのプラグイン開発環境)を使って、ちょっとしたプログラムを開発しました。実際にプログラムを書くのにかけた時間は、長いものでも1週間でしたが(構想と調査には1ヶ月以上かかってます)、どれも実際に使う人が「楽になった」と喜んでくれ、それによって浮いた時間で、より生産的な活動をすることができるようになりました。

こういう経験から、もっと多くの人に「ツカえる」と喜んでもらえるソフトウェアを作りたい、と思うようになりました。そして、「ツカえる」ソフトウェアで浮いた時間を生かして、より有意義で楽しい仕事をして欲しい、と思っています。

ソフトウェア技術者の価値をもっと正当に評価したい

ソフトウェア開発の世界では長年言われ続けていることですが、ソフトウェア技術者の間で、技術力の格差はとても大きいと感じます。その差は10〜100倍とも言われますが、作れば作るほどバグや分かりにくいコードを作り込む、開発効率がマイナスな技術者もいます。

ただ、実際に開発しない人にはなかなかこの違いが分からないようで、結局、社外への売り方は技術者を一律に人数で数えて「人月いくら」で、社内評価ですら、実際の技術力や貢献度の差に比べたらわずかな差しかついていないのが実情です。

自分自身がソフトウェアの開発経験があり、「いいソフトウェア技術者」「いまいちなソフトウェア技術者」が分かる身としては、いい技術者をもっと高く評価したい、そのためにはどうすればいいのかずっと考えてきました。

今のところの結論としては、高いソフトウェア技術を活かして、顧客に他より高く評価していただける形に加工し、それを適正利潤を確保して販売するしかないと思っています。

いわゆる人月商売の受託開発だと、顧客の評価は技術レベルの高低によらず「ソフトウェア技術者1人いくら」という扱いになってしまっているので、「他より高く評価していただける」という点を満たせていません。

対策としては以下の2種類があると考えています。

  • 「他よりすごいソフトウェア技術者」であることを顧客に説明して理解していただき、他者より高い報酬をいただく。
  • 顧客の悩みをぴったり解決するソフトウェア製品を提供し、その製品を高く買っていただく。

いずれにしても「できるだけ高く買っていただく」必要があるので簡単ではありませんし、あまり押しが強いタイプではない自分はつい安売りしたくなってしまいますが、「ソフトウェア技術者の違いが分かる自分が、その技術を安売りしてどうする!?」と自分を鼓舞するようにしています。

1年近くいろいろと試してきて、今のところは2番目のソフトウェア製品の開発を中心にしていますが、高く評価していただけるのであれば、技術者や技術力そのものを提供することもしていきたいと考えています。