思いつきでMBA留学したり起業したりしているものの、日々食べていかなくてはいけないのも事実です。自分のキャリアを振り返ってみると、そこそこ堅実にやっていた貯金や資産運用のおかげでキャリア上のリスクを取ることができたと感じるので、数回に分けて資産運用についてまとめます。
サラリーマンにとって「投資」は自己投資だけ
「投資」とは、金銭や時間などの資源を何かに投入することによって、将来、金銭に限らない幅広いリターンを得ることだと考えています。逆に、値上がりしたときに売って金銭的リターンを得ることを目的とする金融商品購入は「投資」ではなく、「資産運用」だと思っています。
「株を買う」という行為は投資にも資産運用にもなりえます。たとえば、ある会社が別の企業の株を数十%買う場合、値上がりしたのですぐに売るということはほとんどないので、これは金銭的リターン以外の目的がある「投資」と呼べます。一方、サラリーマンが株を買うとき、ほとんどはある程度値上がりしたら売ってしまうわけで、金銭的リターンを目的にした「資産運用」と呼べます。
こう考えると、大半のサラリーマンにとっては、自己投資がほぼ唯一の"投資"です。そして、キャリアを構築する上では、自己投資がとても重要です。資産運用は、自己投資をした残りの資金・時間で行うべきです。金銭的に見ても、資産運用による利益と給料とを比較すると、ほとんどの場合に給料の方が多いはずです。
資産運用の効用
そうはいっても、資産運用も自己投資に次いで重要です。数十万円の余裕資金があれば、各種講座の受講や書籍購入といった自己投資にも充てられるし、もうちょっと余裕があれば、転職先を決めずに会社を辞めることもできます(これをおすすめするつもりはありません。ただ、入った会社がいわゆるブラック企業だったら、逃げ出すことを最優先するべきかもしれません)。自分の場合は、留学に使い、そのまま働いていては得られない経験を積むことができました。
資産運用の基本は天引き貯金
自己投資を最優先すると、資産運用にかけられる時間は、おのずと限られてきます。また、キャリア構築に活用するための運用なので、大幅なマイナスになってキャリアの選択肢を狭めるようなのは困ります。そうすると、資産運用の中心は、まずは給料からの天引き積み立てになります。
天引き貯金について、よく「目標金額を設定するべき」とありますが、自分の場合は以下のように考えていました。
- 当時特にアイデアはなかったが、何か思いついたときに資金がネックになって起業できないというのは悲しいから、有限会社の最低資本金300万円は貯めておきたい(現在この制限はなくなりましたが、起業に必要な資金の目安として悪くないと思います)。
- 会社が心底イヤになったときにすぐに辞めるために、半年ぐらいは食いつなげる資金が欲しい。
さらに、以下のルールを設定しました。
- 毎年の昇給分はすべて天引き貯金に回す(たとえば5000円昇給したら、毎月の積立額を5000円増やす)。昇給すると税金や社会保険料も増えるので、多少加減はしましたが。
- 人生を変える可能性のある投資にのみ使用する。自分は結局、留学と起業に使いました。
預貯金以外の金融商品は余裕資金で
預貯金以外の金融商品は、ものにもよりますが、大きな損失を生む可能性があります。したがって、天引き貯金をして余った資金のみを使い、さらに以下のルールを設定していました。
- 自分が仕組みを理解できる商品のみにする。
- 手数料が安い商品にする(30年といった長期の運用では手数料が大きく効いてきます)。
- あくまでも本業と、そのための自己投資を優先し、資産運用に時間をかけすぎない。
利益の絶対額ではなく、利回りで管理する
長期運用の成績(パフォーマンス)は、利益額や値上がり率ではなく、利回りで判断することをおすすめします。
たとえば買った株が2倍になったとしても、5年かかっていれば利回りは14%程度でしかありません。10年かかっていれば7%程度です。
ここまで来ると、アメリカの長期国債(10年満期)の利回りがだいたい4%程度なことが多いので(現時点では3.2%まで落ちていますが)、値下がりリスクの大きい投資信託で7%より、この方がいいかもしれないと思えてきます。また、株式市場の100年間の平均リターンは、年利7%だという話を聞いたことがあります。
また、数年以上保有している金融商品だと、日々の価格変動が大きく見えても、利回りで見るとたいして変動していないことが分かり、落ち着いて運用することができます。
このように利回りは長期の落ち着いた資産運用に便利なのですが、算出には高校程度の数学知識が必要になるので、次回以降、解説します。
目次
- キャリアを築くための資産運用
- 複利計算と積み立て預金を理解する
- 積み立て投資の利回り計算
- 債券の利回り計算