起業を決めてから、人と話していると「こういう仕事やってくれない?」と言われる機会が増えました。しかし、起業すると言っているわけで、相手の会社の従業員になることはありません。そのような状況で、誰かの依頼を受けて仕事する契約について調べてみました。
なお、私は法律の専門家ではありませんので、以下の情報の正確性を保証するものではなく、また、個別の相談にも応じられないことをお断りしておきます。
よくある契約形態の一覧
- 雇用契約
会社からの業務命令を拒否することはできない。法律上、正社員・パート・アルバイトなどの区別はない。- 正社員
社内で一律に定められた就業規則に基づき雇用される従業員。 - 契約社員
就業規則とは異なる、個別の雇用契約を結んだ従業員。雇用期間、給与体系が正社員と異なる場合が多い。
- 正社員
- 派遣契約
派遣元に雇用され、派遣先の指揮・命令に従う従業員。間接雇用にあたるため、法的な制限が多い。- 特定派遣
システム会社などの従業員を、顧客に派遣する。派遣されていない期間も給与が支払われる。 - 一般派遣
いわゆる登録型の派遣。派遣されていない期間は、給与が支払われない。
- 特定派遣
- 業務委託
法的には、業務委託契約という名称はないが、実務上よく使われる。- (準)委任契約
業務の提供を行う。結果についての保証はない。弁護士、医師など。 - 請負契約
成果物の提供を行う。結果についての保証が必要。
- (準)委任契約
民法には「契約自由の原則」というのがあり、基本的には当事者間で合意できていれば、必ずしもこれらの契約形態である必要はありません。上記の分類は、個別の契約に穴があって揉めた場合に立ち戻る原則、という位置づけです。
いわゆる業務委託契約の詳細
起業した身としては、前節に挙げたもののうち「業務委託」で仕事を受けるのが一番ありそうですので、さらに詳細を調べてみました。
この業務委託というもの自体に法的な定めはありませんが、委任契約と請負契約という、法的に定められた2つの契約形態を総称するものとして使われていることが多いようです。委任契約と請負契約には、以下のような共通する特徴があります。
- 業務の拒否が可能
- 契約範囲外の業務依頼の禁止
- 委託元による時間拘束不可
- 受託側の要員の交替可
- 原則として、受託側の所有する機材を用いて作業する
要するに、雇用契約よりも、大きな裁量があります。もちろん、その分のリスクと責任もあるわけですが。さらに、委任契約(準委任契約も含む)と、請負契約には、以下のような違いがあります。
(準)委任契約 | 請負契約 | |
---|---|---|
よくある例 | 弁護士、医師、コンサルタント | ソフトウェアの開発委託 |
提供物 | 善管注意義務を果たした行為 | 欠陥のない成果物(瑕疵担保責任あり) |
費用 | 報酬の他に、交通費などの費用を請求可 | 材料代・制作費・費用などは報酬に含む |
契約解除 | 原則として、相互にいつでも解除可 (突然の解除などで相手に不利益を与えた場合は、 損害賠償義務あり) |
委託側は、成果物の完成前なら解除可能。 受託側は、相手が破産したときのみ解除可 (契約に、別途約定解除権を明記することも可) |
善管注意義務とは、平易な言葉では「プロとして最善を尽くすこと」と言えます。弁護士など、法律に職務規程がある場合は、それに従うことも必要です。
ただ、逆にこの善管注意義務を果たしていれば、結果が仮に依頼人に悪いものであったとしても、その責任を負う必要はありません。たとえば、敗訴した裁判で弁護を担当した弁護士、病気で亡くなった方を担当した医師などです。
その他の留意事項
契約というのは、最初に良い状態のときに結び、あとで悪い状態に陥ったときに最後の砦として働くものです。つい気軽に契約しそうになりますが、特に、契約の解除についてははっきりと定めておくのがよさそうです。