転職3年で起業を決めるまで(33〜36歳)

思い切り働き自分を鍛える充実感

転職した目的が「仕事を通じて自分をとことん鍛えたい」だったので、通勤時間なんて無駄と考えて、すぐに会社から1駅のところに転居しました。頑張れば徒歩でも通える距離です。この後、3年間この環境で仕事しましたが、時間の節約以上に、満員電車に乗らないことによって元気に働けることが予想外に効果的でした。家賃は高かったのですが、自己投資として非常によかったと思っています。

転職先はインターネット企業だったのですが、そこで、海外向けの新サービス開発の部署に配属されました。入社してみると、自分を含めてメンバーは3人だけ。これが3ヶ月後には正社員だけで30人になりました。まず最初の仕事は、こうして急に増えたメンバーを、いかに早くプロジェクトに取り込むかでした。そのために、研修プログラムを考えたり、オフサイトミーティングを企画したり、他部署と交渉して座席をもらったり、いろいろなことをやりました。

そのうち開発が本格化し始めると、今度は海外にいるサービス相手とのコミュニケーションがボトルネックになってきました。そこで、ブリッジSE的な人を置くことを提案し、他に適任もいないので自分でやることにしました。

その後も別の部署で、オンラインショップの注文処理をやったり(いつの間にか「店長」と呼ばれるまでになりました)、トラフィック分析をしたり、新規事業の戦略見直しをしたり、と未経験な業務ばかりでしたが、いろいろな経験をすることができました。

今から考えると、1社目の電機メーカーは、会社としては停滞していたものの人材は豊富でした。こういう会社では、質のいい経験者が余っているので、未経験者には仕事が回ってきません。しかし、このインターネット企業のように成長企業では、会社としてやるべきことの量に対して、人が足りません。こういう会社では、未経験な人間にでもやらせてみるしかないため、とにかく自分を鍛えたい人間にはとてもいいところでした。

経営者になることを具体的に考える

こうして約3年あちこちの現場を経験するうちに、ふと気づくと、仕事に対して自分の「型」のようなものができていました。まず現場に入り込み、必要なら作業を手伝いながら課題を引き出し、数字を集めて、見やすい形にまとめてコンセンサスを取り、全体を動かしていく、という感じです。

「型」ができてくると、部署が変わっても毎回これを適用しているだけ、という感じがしてきます。そのため、より幅を広げて「経営」と呼べる経験を積みたいと思うようになってきました。

自分としては、「経営」というのは、採用を中心とする人事権と、予算とを持って、事業を成功させることだと考えています。そこで、社内・社外含めて、そういうポジションが取れないか検討したのですが、この先、数年間のキャリアを賭けたいと思えるようなポジションはありませんでした。

自分で起業しちゃえ!

大手電機メーカーと、新興企業とはいえすでに大企業になっている会社とで10 年働いているうちに、「これからの世の中は、身軽なスタートアップ企業がイノベーションを担い、その中で人手が必要になったものだけが大企業になる」と感じるようになってきました。

また、いくつかの異なる現場で「与えられた現場を何とかする」ことを繰り返しているうちに、「与えられた」という点に物足りなさを感じるようになってきました。簡単に言えば「他の人が考えたイマイチな事業アイデアのために一生懸命働くぐらいなら、同じイマイチな事業アイデアでも自分のもののために汗をかきたい」ということです。

そして、「経営」の経験を積む一番の近道は、自分で会社を作ることです。

こうして「事業アイデアはないけど、とりあえず起業しよう」という結論に到達しました。

やりたいことは、さきほど書いた「身軽なスタートアップ企業によるイノベーション」を促進することです。自分が持っているのは、ソフトウェアとマネージメントの知識なので、これを活かして、何かサービスを開発したいと思っています。

一応のもくろみ

いくら「お気楽起業」といっても、日々食べていかなくてはいけないので、以下のような計算(?)はしています。

  • 不景気の間に起業しておけば、次の景気回復局面で、その恩恵にあずかれる可能性がある。
  • 売り上げゼロでも、引っ越して家賃を節約しておけば、1,2年は飢え死にはしないだろう。
  • ソフトウェア関係なら、Amazon EC2とかさくらインターネットもあるし、コーディングも自分でできるし、資本はたいして必要ないだろう。